【ざっくり概算】フィギュアの放映権料はどれくらいか

ワールドカップで盛り上がる中、同じくテレビ朝日が放映権を持っているフィギュアスケート・グランプリシリーズは深夜の録画放送(しかも関東ローカルのみ)と有料配信で提供されており、ファンの不満がたまっているようです。


今週末のグランプリファイナルについてはゴールデン帯で録画中継されることが発表されていますが、やはりライブで観たいというのが心情でしょう。ライブで観るためには有料配信のチケットを購入する必要があります。

また、昨シーズン限りで競技を退いた羽生結弦選手の単独公演の権利もテレビ朝日が持っていることから、羽生ファンと他の選手のファンの間で摩擦が起こっている光景もみられます。正直あまり健全な状況とは言えません。

中継の改善を訴えるのはファンとして当然の権利でしょうし、「テレ朝は放映権を手放せ」的な論調も理解はできる範囲なのですが、問題はテレ朝が実際に放映権を手放したとして、他の放送局が現在以上の待遇をもって権利の獲得に動くか…という点にあります。


ただ、つくづく残念なのは「テレ朝がいなくなれば、ISUの公式ライブストリーミングが無料で観られる」という論調がみられることです。つまり、どこも放映権を獲得しないのが理想だという意味にとれますが、放映権がなければジオブロックが外れるという発想は実に安易なものと言わざるを得ません。

では、放映権が売れなければどんな影響が出るのか…という話ですが、単純にISUの収入が減ることになります。今年のISUの総会ではこんな内容が発表されていました。


  • 2022~24年の3年間で、ISUの収入は総額1億500万スイスフラン(以下CHF)を見込んでいる
  • その内訳は、放映権料が5,500万CHF、IOCからの配分金が2,700万CHF、スポンサー料が2,200万CHF
  • 放映権料のうち、65%がアジアから。とりわけ(in particular)日本が最大の市場となっている

アジアからの放映権料のうち日本がどれだけ占めているかは不明ですが、かりに60%程度と仮定すれば、ISUの放映権料のうち65%×60%=40%程度が日本からという計算です。

ISUの報告書ではフジテレビ・テレビ朝日・J SPORTSの3社の名前が登場しています(NHKは大会主催者でありISUに支払う立場ではない)。この順番にもおそらく意味があり、高い順に並べているのでしょう。世界選手権と四大陸選手権を持つフジテレビがもっとも高く、グランプリシリーズ(NHK杯を除く)を持つテレビ朝日が2番目。有料放送のみの権利を持つJ SPORTSがもっとも安いことになります。


1年間に直すとISUの放映権料は1,830万CHFで、日本の放映権料は730万CHF。現在のレートで10億円強という計算です。

2014年の記事ですが、フジテレビが10年間で100億円以上の放映権料を連盟に納めていた…なんて報道も。1年あたり10億円以上とは驚きですが、この連盟というのはISUとJSFのどちらを指すのかよく分からず(たぶん両方)、あまり正確な記事とは思えません。おそらく盛っているような気がします。


別の記事だと、世界選手権の放映権料を2~2.5億円としているものもあります。四大陸選手権と合わせて4億円程度という数字が現実的でしょうか。ちなみに、JSFの事業報告書によると、フィギュア部門の放映権料は約2億円という記載がありますので、足しても10億円には遠く及びません。


現在は為替レートが円安に振れているので、各局の負担は重くなっています。当ブログ的超ざっくり計算では、フジが5億円、テレ朝が4億円、J SPORTSが1億円くらいかな…というのが結論です。テレ朝の分を肩代わりできるところは果たして存在するのでしょうか。なければ、単純にISUの収入が減ることになります。年間の収入が1割近く減るのはなかなかの一大事です。

ISUからみると、日本のファンからこれ以上お金を引き出すことは難しいように思われます。ロシアからのお金はもう期待できません。となると、これまでフィギュアの人気が低かった国を引き上げていくのが遠回りのようでもっとも近道なのでしょう。

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