ABEMA・藤田社長インタビューと4年後の展望。

スポーツ報知でABEMA・藤田晋社長の独占インタビューが掲載されています。まずはこちらをご紹介。

当ブログが注目したポイントをいくつかあげておきます。 


―今後、他の国際大会への進出は。
 「あれだけのアクセスは世界でもレアケースで、今回インターネットの限界みたいな部分を我々自身がわかったところがあって。あれだけのスピードで同時に届けられる地上波の優位性というのもわかりましたし。これからの進化でまた、いろんなことができていくようになるとは思いますけど。極端にいうと、現時点で日本戦の独占放送は無理なんですよ。技術力の問題ではなくキャパシティーの問題で。現状の日本のインターネットの回線だと難しい。金銭面でもなく技術面でもなく。ただ、これはやがてできるようになっていくと思うんですけど、現時点では難しい。地上波だからこそできることなのだというのはよくわかった」


今回のABEMAの配信を担当したCDN提供業者のAkamaiでは、日本だけでなく韓国向けのサーバも導入したとの話が。もし韓国でも同様にライブストリーミングを行っていたら到底もたなかったことになります。世界的なイベントとなると、まだまだテレビの持つ同時送信能力は侮れません。


もちろん4年後にはまた状況が変わってくるでしょう。テレビ局もネットでの同時配信を徐々に始めており、ネットを通じてテレビ番組を視聴するのが当たり前になってくると、4年後はネット独占になってもおかしくありません。


 ―4年後のW杯も生中継?
 「そのつもりですけど、入札したい会社も増えるでしょうから、どうなるかまだわかりません。ですが、基本的にはやるつもりでいます」


ただし、ネット独占になったとしてもABEMAになるとは限らないわけですね。いわゆる「ウマ娘マネー」は4年後にはありませんし、大金を投じて知名度を上げるステージではなくなっています。現在のABEMAのポジションには別の企業が立っていることでしょう。


そして、今回のABEMAの配信にはサイバーエージェントと共同出資しているテレビ朝日が深く関わっていました。テレビ局も別に指をくわえて見ているだけではありません。番組制作で培ったノウハウを活用して今後もネットに食い込んでいくでしょう。


さて、筆者は藤田社長が「入札」という言葉を使っているのが気になりました。今回はジャパンコンソーシアムこそ崩れたものの、電通が取りまとめを行っていたことは変わりません。しかし、次回では電通が外れ、FIFAによる直接販売になる可能性が浮上しています。その際に「入札」が実施されるのであれば、競合しだいでさらに放映権料が膨れ上がるかもしれません。

次回大会についてはここに来てフォーマットを見直すという話も出ていますが、試合数は64→80に増える代わりに、グループリーグは3試合→2試合に減る予定です。ですから、日本戦も最低2試合の保証となり、テレビ局の参入はさらに減ると見込まれます。


時差的にも平日の早朝~昼の時間帯があたると視聴率は見込めません。かつて、コパ・アメリカ(南米選手権)のテレビ放送が消え、DAZNになった時を思い出します。入札の参加者が減れば、放映権料は減少に向かうはずなのですが、逆に新たな参加者が名乗りを上げることも充分に考えられます。

―無料?
 「もちろん。それ以外選択肢として持っていないです」


有料になる可能性も充分にあると思われます。日本戦や開幕戦・決勝戦といった重要なカードは、FIFA側の意向もあって引き続き無料になるものと考えられますが、それ以外については現状なんとも言えません。


―W杯で呼び込んだ視聴者を「固定客」として定着させるためには?
 「社内では残存プロジェクトと言っているんですけど、一番重要なポイントとして見ています。ネットのテレビの良さは1回コンテンツを持っていけば短期的にはボンと上げられるんですけど、来て去るだけなら意味がないですから。コンテンツの充実、機能が優れているとわかってもらえば残存者が増えます。1回見るだけならホームページ上に突然立ち上がった動画を見ていることとあまり変わらない。今のところ他の番組を視聴したり、再びABEMAに来訪してくれる方の数字も順調に伸びています」


2002年の日韓大会でスカパーが放映権を獲得した際には、視聴者はアンテナとチューナーを購入する必要がありました。ABEMAは、テレビで観たい場合は少し投資が必要ですが、基本的にはアプリやWebブラウザでも観られます。敷居が低い分、視聴者を呼び込みやすいし、逆に離れていきやすいわけですね。


当初の目的である「知名度を上げる」「まずは使ってもらう」という点では、当初の想定以上の成果をあげたと言ってよいでしょう。その後はコンテンツと機能による競争に入っていきます。すでにいくつか新たな打ち手が控えているものと思いますので、近いうちにまた大きな発表があるでしょう。

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