女子W杯の混迷は電通不在が原因か。

以前ちょこっとお伝えした情報の中に、FIFAが電通との代理店契約を昨年限りで打ち切った--というものがありました。この時点では見出しレベルの情報にとどまっていたのですが、新しい情報が見つかったので改めて検討してみます。


昨年(2022年)まで、FIFAのアジア地域における代理店は電通とinfrontが担当していたのですが、2023年からは両社との契約を打ち切り、FIFAが自ら販売する体制に切り替えたとのことです。2030年まではこの体制が続く見込みとなっています。

今回から女子ワールドカップの放映権は男子とのセット販売ではなく、単独での販売となったことは周知の通りですが、日本ではどうなっていたかというと、電通が代理店としてFIFAから仕入れ、NHKと民放各局で構成されるジャパンコンソーシアム(JC)が購入する形となっていました。


2018ロシア大会ではJCが機能していましたが、2022カタール大会では離脱が相次ぎ、ABEMAが加わることになったのは記憶に新しいところです。それでも電通が仕切っていたことには変わりないのですが、今年からまた新たな枠組みが必要となりました。


電通はテレビ局と強い関係を築いており、代理店から外れたと言ってもスポンサーの確保などで関与する余地はおおいにあるのですが、少なくとも表舞台から去ったことの影響はあると言えます。FIFA、テレビ局、そしてスポンサーの利害を調整するのが代理店の仕事であり、日本のスポーツビジネスにおいて電通以上の仕事ができるところは(残念ながら)ありません。


さて、FIFAと電通との契約では、2015~22年の8年間で4.5億ドルを電通が保証し、それを上回った分は折半するという形になっていたとのこと。当時のレートだと500億円程度になりますが、2大会を合わせた放映権料が500億円を下回れば電通の赤字ということになります。

2018ロシア大会では600億円、2022カタール大会では350億円などという数字を出したメディアもありましたが、実際のところはそこまで高くはないようです。ロシア大会については300億円台という見解が出されています。

また、カタール大会についてはABEMAを運営するサイバーエージェントの決算情報から、ABEMAが支払った放映権料は70~80億円、他社を含めた合計は200億円程度と考えたほうがよさそうです。


よって、2大会を合わせると500数十億~600億円程度となるでしょう。これならば電通にとっても赤字は免れていますし、逆にぼろ儲けもしていません。先ほども書いた通り、代理店の仕事とは利害調整であり、電通だけがぼろ儲けできる構造ではないのです。

電通の存在にはもちろん功罪があるわけで、今回このような形で開幕直前まで放映権が決まらなかったことは今後の課題となりますが、一度どこかでこういう経験をしておくべきだったとも言えます。ガリバー・電通の力を弱くすることは将来必要になってきます。2026年大会以降の放映権料を抑えるためにも、各社が交渉力・調整力を身に付けなければなりません。

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