印クリケットの放映権が業界再編問題に発展。
インドの放送業界で大きな再編の動きが出てきています。ディズニー傘下の「スター・インディア」と、地元インドの財閥であるリライアンス・インダストリー傘下の「Viacom18」が合併するというのです。両社を合わせた評価額は85億ドルに達するとされています。
しかし、この合併はインド当局に目を付けられています。日本の公正取引委員会にあたるCCI(インド競争委員会)による審査が行われていますが、CCIが問題視しているのは両社が保有するクリケットの放映権です。
インドにおけるクリケットの主要大会の放映権ですが、以前まとめたことがありますので再掲します。
- IPL (インディアン・プレミアリーグ)
- テレビの権利はStar、ネットの権利はViacom18が落札
- 2023~27年の5年契約
- Disney Starが2357億ルピー(約4200億円)、Viacom18が2050億ルピー(約3650億円)
- BCCI (インドクリケット管理委員会)主催の国際試合
- Viacom18が落札
- 2024~28年の5年契約
- 総額596億ルピー(約1060億円)
- ICC (国際クリケット評議会)主催の国際大会
- Starが落札 → 男子とU-19のネットの権利をZeeにサブライセンス
- 2024~27年の4年契約
- 総額30億ドル(約4400億円) →サブライセンス料は14億ドルと推定
ここで問題となっているのが、最後のICCです。Starは、落札した権利の一部を同業他社であるZee Entertainmentにサブライセンスする計画でした。Zeeは、これまた同業のソニー・ピクチャーズと合併する計画だったのですが、この話は破談に終わります。これにより、Zeeはサブライセンスの費用を捻出できなくなり、この契約もまた消えてしまったのです。
さすがにStarの親会社であるディズニーもこれにも怒り心頭で、ロンドンの裁判所に提訴。現在係争中とのことです。
ディズニーも業績が低迷していることから、インドでの事業を再検討しており、撤退も選択肢のひとつとしていました。そこに本来もらえるはずだったサブライセンス料14億ドルが重くのしかかります。結果として、Viacom18との統合を選ぶことになりました。
さて話を戻しますと、StarとZeeのサブライセンスが成立しなかったことで、インド市場におけるクリケットの主な放映権はStarとViacomによる寡占状態となっており、この両社が統合するのはさすがにどうなの?と当局に目を付けられていることになります。
そのため、ディズニーはICCと放映権の再交渉を行っていると報じられています。ディズニー側としては放映権料を30億ドルから半分にしたいようです。そうなれば、余計に支払うこととなった14億ドルが浮くことになります、
でも、ICCも正直言ってとばっちりですよね。欧州CLの放映権を途中で手放したDAZNでさえ、コロナ禍というやむを得ない事情があったわけです。こちらはインド国内における放送通信業界の再編によるもので、別に不可抗力でもありません。
よってICCが首を振る理由もないはずですが、ここで政治的な話が。ICCの次期会長を決める選挙が年内に行われるのですが、現職のニュージーランド人の会長に続投の意思はなく、替わってインド人の候補が有力視されているんだそうです。さてさて、インドの放送通信業界と、世界のクリケットを巻き込んだ騒動はどんな決着を迎えることになるのでしょうか。
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