DAZN、テニス・WTAツアーの配信終了か。

本年もよろしくお願いします。

例年であれば今年の展望の記事をまず出すのですが、昨年末に起こった話題について触れておきます。テニスの男子ATPツアーは今シーズンからU-NEXTに放映権が移りましたが、女子のWTAツアーについて、従来配信していたDAZNでの配信がなくなっているとのことです。


現在は全豪オープンに向けた前哨戦が開催される時期で、とくにブリスベン国際は男女が同時開催されているだけに、男子のみが観られて女子が観られないというのはあまりにも分かりやすい落差となっています。


WTAの公式サイトにある"Where To Watch"のページには、まだ日本の放映権はDAZNであると記述されていますが、単純に更新が遅いものと思われます。ポルトガルではDAZNが買収したEleven Sportsの名前がまだ残っていたりしますし。

視聴手段としては、WTA公式の「WTA TV」が日本からでも契約できるようです。料金は月額1,100円、年額8,256円となっています。


「告知なき終了」はDAZNではよくあることで、顧客からの問い合わせが増えてから騒ぎ出すというのはこれまでも繰り返された光景です。そもそも終了の決定権は誰にあるのか。終了の情報がDAZN Japanに降りてくるのはいつなのか。外資系らしい情報系統の問題が見えてきます。事前に分かっていればやりようはあるはずなんですよね。

DAZNの前身であるPerform Groupは、WTAと合弁で「WTA Media」という会社を設立し、映像制作と放映権の管理を行ってきました。現在の契約は2017年から10年間で、総額5.25億ドル以上とされています。ですから、DAZNはWTAの放映権の代理店的役割を担っていることになります。


WTA TVもWTA Mediaが映像と権利を握っているからできるわけで、その収入はWTA Mediaを通じてDAZNにもいくらか還元されるはずです。ですから、なおさら終了するならWTA TVの案内をすべきだったと思います。


DAZNがWTAを配信している(していた)国はドイツ・カナダ・日本で、いずれもDAZNが比較的初期から参入していた市場に限定されます。ポルトガルでも配信されていますが、これは上述した通りEleven Sportsの買収にともなうものです。


これらの国でも、別に放映権料が無料になるというわけではありません。合弁会社である以上、WTAの利益を損ねては背任行為となります。まずは他社に買ってもらうことが最優先ですが、上記の市場ではあえてDAZNが自ら保有する判断をしていたことになります。

それだけ価値があると判断したとも、あるいは売れなかったから抱え込んでいるとも言えるのですが、どちらかと言えば後者の面が大きいような気もします。売れるならば売ったほうがいいはずなんですが、大坂なおみ選手がトップを走っていた時期でも買うところはなかったわけです。


昨年は日本開催の「木下グループジャパンオープン」「東レパンパシフィックオープン」の2大会が無料で配信されました。とくに後者はTBSでの放送がなくなったという経緯もあるのですが、いま考えてみると無料にすることで最終テストをしていたのかもしれません。

https://dazngroup.com/press-room/1003/

DAZNが2027年以降も契約を更新する可能性はまずありません。2023年にWTAは投資会社のCVCキャピタルパートナーズから1.5億ドルの出資を受け、合弁会社「WTA Ventures」を設立しており、スポンサー等の商業権の管理を行っています。現在WTA Mediaが行っている業務も今後はこちらに移管されていく予定です。

また。今年中にもATPツアーが合流し「Tennis Ventures」という会社に発展するとされています。男女ツアーの統合へとつながる動きですが、こうなると規模の大きいATPのほうに主導権が移っていくことになります。


WTAとDAZNの契約は残り2年と推定されます。現在はいわば「店じまい」モードと言えるでしょう。モチベーションの低下もまたひとつの要因かもしれません。

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