DAZN笹本氏インタビュー。鍵は「ハイブリッド」
今回は4月9日に掲載されていたDAZN Japan・笹本裕CEOのインタビュー記事を紹介します。もともとGW用に出そうかと思っていた記事なのですが、昨日Bリーグの放映権獲得というニュースもありましたので、繰り上げることにしました。
笹本氏は昨年2月に就任しましたが、前職はTwitter Japan(現X)の代表であり、イーロン・マスク氏による買収によって去る形となっています。
昨年8月にはイーロン・マスク氏と過ごした時期について語った本を出版していますが、Twitterに訪れた大きな変化、そしてDAZNに対する不満も重なり、当時のXでは結構辛辣な批判が書かれていたことを思い出します。
しかし、その後のマスク氏はトランプ政権誕生に大きく貢献し、実にやりたい放題やっています。その姿を傍目から見ていると、笹本氏の発言が再評価されてもいいようにも思えます。
今回のインタビューで、笹本氏はマスク氏に対して「3か年計画を3時間で達成する」ことを考えるほど時間に対する価値観が極端であると語っています。また、人に対する興味がない一方でシステムには関心があり、結果として「人類を救う」のではとも語っています。まぁ、確かに最近やってることはそのように感じますね。
さて、話を戻しまして、笹本氏はこれからのDAZN Japanについて「ハイブリッドなDAZN」を作っていくとしています。これには2つの意味があり、ひとつは単純なOTTサービスから脱却して、複合的にスポーツの楽しさ・興奮を伝えるコンテンツを提供するということです。
最近「FANZONE」の対象コンテンツが増えたのはそれを体現しています。本来はそこにファンタジースポーツであったり、あるいはスポーツベッティングといった要素を載せていきたいところですが、日本ではまだできないのが現状です。日本支社としてどこまで裁量権があるのかは不明ですが、本社から来た技術を日本の文化にアレンジしながら取り入れることが求められています。
もうひとつは収入源のハイブリッド化です。無料配信のコンテンツが増えていることはご存知の通りかと思います。あとはCMやタイアップコンテンツによって、広告収入の割合は徐々に増えているものと考えられます。将来的には、広告収入が全体の半分以上になることを目指していると発言しています。
昨年まで3年連続値上げを行っていたDAZNですが、今年についてはいったん止まった形です。他国についても、新たにリーグ・アンの放映権を獲得したフランスを除いては、目立った値上げは実施されておらず、戦略の転換を感じさせます。そのフランスで苦戦している現状ですから、価格戦略は限界に達していると言ってよいでしょうね。
無料配信が増えているのは、当然ながら今後有料に転換してくれることを期待しているわけですが、同様に若者層を取り込んで長く定着してもらうのも大事なことです。ということで、ABEMAと組んで始めた「学割キャンペーン」の件にも触れています。当たり前ではあるのですが、こうした企画はABEMA単独でできるものではなく、DAZNとの協議が必要です。
笹本氏には「アジア事業開発」という肩書も付けられています。笹本氏は、現在本格進出している日本と台湾だけでなく、他のアジア地域でも日本発のビジネスモデルを展開したいとしています。
正確にはAPAC(アジア太平洋)であり、オセアニアなども範囲に含まれます。オーストラリアでは地元のFoxtelを買収。また、ニュージーランドでも欧州CL/ELの放映権を獲得したほか、ラグビー協会と交渉していると報じられています。
日本は円安によって市場規模が縮小してますし、オセアニアもさほど人口が多いわけではありませんが、その分自由にやらせてくれるのであれば、そこで評価されたビジネスモデルが欧米に逆輸入といった展開もあり得ますので、ここはきちんと利益を出して、将来への道筋をつけておく必要があるでしょう。また、コロナ禍によって計画が頓挫した東南アジア市場への挑戦も考えられます。
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