NPB、フジ取材パス没収で公取委から警告。
昨年の日本シリーズにおいてNPBがフジテレビの取材証を没収した件について、公正取引委員会はNPBに警告を出す方針を固めたと報じられています。
NPBが警告を受けるのは、昨年9月以来となります。選手側代理人は弁護士に限るとした件、また代理店は複数の選手と契約できない件が対象となりました。NPBは警告を受け、この制限を撤廃しています。
フジの取材証を没収した経緯は、フジテレビが日本シリーズの裏番組としてMLB・ワールドシリーズの録画中継をぶつけたことに端を発しますが、筆者としても気持ちは分かるけど正直やりすぎでは・・・という思いを当時書いておりました。何かしらの報復は必要だとしても、このやり方はやはりフェアではないでしょう。
5年前にも、いわゆる「田澤ルール」をめぐって公正取引委員会が調査を行っていました。この件はNPB側が自主的にルールを撤廃したため警告までには至りませんでしたが、昨年、そして今年と立て続けに警告が出されたことは、NPBに対して意識の変革を迫っていると言ってよいのかもしれません。
他の席が空かない限り新規参入が認められない、いわゆるクローズドリーグであるNPBは、その存在自体が独占禁止法との境界ぎりぎりであると言ってもよいでしょう。ドラフトは選手の「職業選択の自由」を奪っているのでは、という主張は以前からなされていました。
アメリカの事例では、1972年に連邦最高裁が出した判決により、MLBは(日本の独禁法にあたる)反トラスト法の例外であると認定されています。それ以降、選手会はMLBと労使協定を結ぶことによって、FA制度など数々の権利を獲得しています。たまに交渉が決裂してストライキが発生することはご存知の通りです。
昨年亡くなったナベツネこと渡邉恒雄氏は、野球協約を隅から隅まで読み込んでいました。自由競争を重んじる姿勢はたびたび舌禍を生みましたが、筋は通していた人物だとも言えます。
Jリーグ発足時の川淵三郎氏との論争は有名ですが、自由競争を掲げるプロ野球がクローズドリーグで、「独裁者」川淵チェアマンが率いるJリーグがオープンリーグなのはある意味大きなねじれです。後に両氏は対談し、和解に至るのですが、そこにはお互いが抱えている矛盾への自覚と、相手に対するリスペクトがあったものと思われます。
川淵氏の著書『黙ってられるか』に二人の対談が掲載されていますが、何度読んでも面白いですね。お薦めします。
当ブログとしては「放映権の一括管理」についても触れざるを得ません。一括管理も独禁法に触れるのでは、という指摘も当然あるのです。アメリカでは1961年に制定された「スポーツ放送法」によって、反トラスト法の適用外とすることが認められましたが、日本で同様の判断が下されるかは正直分かりません。
放映権の一括管理によって、統括団体は放映権料を高く売ることができるようになりました。放映権料の分配で戦力均衡を生み出し、リーグの魅力を高めることにも成功しています。しかし、現在は放映権料の高騰によってファンの負担も大きくなっています。スポーツが今後もNational Passtime(国民的娯楽)となり得るのか。ここ数年の動きによっては、大きなターニングポイントとなるかもしれません。
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