日経もDAZN笹本氏にインタビュー。日本で単年度黒字達成か。
昨日(6/19)付の日経新聞に「DAZN、巨額投資に勝算」という見出しで、DAZN Japan・笹本裕CEOへのインタビュー記事が掲載されました。
筆者は実際に日経新聞を購入して読みましたが、なかなか濃い内容のインタビューであったことをお伝えします。先日「PIVOT」で公開されたインタビュー動画とあわせて、ぜひチェックしてみてください。Webでは有料記事ですが、無料会員でも月1本に限り記事を読むことができます。
内容をすべて書いてしまうと怒られますので、いくつかポイントを抜粋します。記事の前半ではDAZNのグローバルな面、後半は日本市場のローカルな面についての質問でした。
- 現在開催中のクラブワールドカップ
- イベント単体では赤字だが、新規加入者獲得などで十分事業に寄与
- DAZNの経営状況
- 2024年以降の経営状況は改善。売上の伸びは加速しており赤字も縮小
- サウジの投資ファンド(SURJ)から10億ドルの出資を受けた件
- 地域ごとにパートナーシップを強化する戦略
- 今後の動きを見てもらえれば「サウジだけではない」
- 昨年、サッカー日本代表戦を無料配信した件
- 非常に大きな投資だったが、想定以上のリターンがあった
- 値上げを繰り返した件
- 加入者数が落ちなかったわけではないがコアファンは残ってもらえた
- Jリーグをベースに、「DAZN Baseball」プランの投入で野球も伸びた
- 広告の収益も上がってきている
- 昨年は単年度黒字を達成
- ドコモとの提携効果
- 新規加入者数が、過去の平均と比べて15倍のペースに
- 「料金が高すぎる」との声について
- 無料体験(DAZN Freemium)や、ドコモの新プランで入口を増やす
- 個々の価値観にあった選択肢をつくる
- 野球以外の競技別プランやPPVを拡大する可能性も
- 2026FIFAワールドカップの放映権
- 興味関心は高い。クラブワールドカップでFIFAとの距離は縮まった
どれも注目される発言であり、PIVOTのインタビューと比較してもだいぶ踏み込んだ印象があります。ここに出てきたテーマについては、今後何回かに分けて記事にしていきたいと考えてますが、個人的にもっとも注目したいのは「日本市場において単年度黒字を達成した」というものです。
毎年のように巨額な赤字を垂れ流し続けたDAZN。2023年は14.8億ドルの赤字を計上していますが、日本を含む各国で値上げを繰り返したことや、「DAZN Freemium」の開始で広告収入の増加に舵を切ったこと、そして欧州の主要国でスポーツベッティングに参入したこともあって、2024年には売上が増加。グローバルでの黒字化も視野に入ってきています。
今年に入ってサウジ系の投資ファンド(SURJ)から10億ドルの出資を受け、またクラブワールドカップの放映権に10億ドルを費やしているわけですが、サウジマネーが単なる赤字の穴埋めに使われたら、何の意味の投資か分かりません。経営面での改善があったからこそ実現したものと考えられます。
ただ、日本市場単独でみた場合、スポーツベッティングによる収入ももちろんありません。他社の調査からみても、値上げの連続によって売上が大きく増えたといったことはなく、横ばい程度であるとみられます。
そうなると、増収の主な要因は広告だと言えます。笹本氏の他のインタビューでは収入源の「ハイブリッド化」を進めていると答えており、将来的には売上の半分以上を広告から得たいとしています。もちろん、視聴者から嫌がられないような出し方を工夫する必要はあるのですが、ライブコンテンツが広告媒体として大きな価値を持っていることは事実であり、AmazonやNetflixなども力を入れている分野です。後れをとるわけにはいきません。
上記の調査が正確であるとするならば、値上げはユーザーの不評を招いただけで、売上増加には寄与していないことになります。広告の効果をさらに高めたいのであれば、会員数が多いほうがよいわけです。クラブワールドカップはそのための好機であり、日本ではドコモとの提携という策を打ってきました。
その記者会見の場で、笹本氏は「当面値上げしない」という発言をしています。一度上げた価格を下げるのは難しいのですが、選択肢としては一考の余地があるでしょう。また、記事にも出てきた通り、ライトとヘビーの中間を埋める施策として、新たな料金プランの投入やPPVの増加といった施策も十分考えられる段階に来ていると言えます。
本来であればサブスクの料金プランはシンプルなほうがよいのですが、広告収入という要素が絡んでくると、とれる選択肢の幅は広がってくるのですね。
PIVOTのインタビューでは、質問者が笹本氏にどれだけの権限が与えられているのかを探りながら進行しているのが印象的でした。円安が進んだことで、DAZN本社からみると日本市場は若干縮小しているように見えるかもしれませんが、それでも黒字化という結果を出すことで発言力は強まっていくでしょうし、離れた極東の地でいろんなことを試していくのが大事なのでしょう。
笹本氏にはDAZN JapanのCEOだけでなく、APEC(アジア太平洋)の事業開発という肩書も付けられています。オーストラリアではFoxtelを買収し、ニュージーランドにも進出。また、韓国や東南アジアにも進出する可能性が出てきており、こちらも手腕も注目されるところです。「サウジだけではない」という言葉の意味が気になります。
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