DAZN、CWCの$10億は回収できるか。
昨日記事にした日経新聞のDAZN・笹本氏インタビューにも関連する話題ですが、現在DAZNが独占配信中のFIFAクラブワールドカップは、グローバルでの放映権料が10億ドルと報じられています。果たしてこの金額を回収できるのかという話です。
今年に入り、サウジ系の投資会社であるSURJからこちらも10億ドルとされる出資を受けたため、数字だけで言えば帳尻が合っているようにも見えますが、それだとお金が単に右から左へと流れていくだけです。投資である以上、今後の成長がなければ意味がありません。
まず、この大会だけで10億ドルを回収するのは不可能です。各国で進めてきたサブライセンスも、総額で2~3億ドル程度だと報じられています。もちろん、サブライセンスによって得られる効果もあります。各国の放送局との提携により、今回は15の言語に対応することができました。また、放送局はDAZNの宣伝に協力してくれることになります。
DAZNとしては、世界で1億人以上の新規ユーザーを獲得することを目標としているそうです。それだけの視聴者が集まれば、広告収入でもある程度回収することができるでしょう。インフラ面では、最大2億人が同時視聴しても大丈夫な態勢を整えたとしています。障害を起こさずに大会を終えられれば、グローバルでも大きな大会をライブ配信できることをアピールできます。
無料配信ではありますが、会員登録が必要なのでそれだけのデータ基盤を持つことができます。今後は広告収入の比重を高めていくことになりますので、まずは人数をかき集めることが大事になってきます。
もちろん、その数%でも有料会員になればさらに収益に寄与することができます。そのためにはまた大きな花火を打ち上げる必要があるのですが、DAZN幹部のWalker Jacobs氏によると、今年の後半、そして来年に何かしらがあることをほのめかしています。Jacobs氏にはアメリカ支社長という肩書きもありますので、アメリカ市場を意識した発言かもしれません。
すでに発表されている「FIFA+」との統合は、大会終了後にも本格化するものと思われます。今回の発表では、FIFA+の運営もDAZNが担うという記述があります。従来もDAZNが買収したEleven Sportsを通じてFIFA+に関与してきましたが、ここで主導権を握ることになります。
その先には、FIFA主催の大会について今回と同様にDAZN独占にしたり、あるいはPPVなど新たな課金モデルを導入するといった可能性も出てくるでしょう。
話を日本市場に転じると、昨日紹介した笹本氏へのインタビューでは、来年のワールドカップの放映権についても興味関心を持っていることが明らかになりました。日本では巨大な案件への投資を控えていた感があっただけに、積極的な姿勢に再度転換した形です。昨年度黒字化を達成し、今年はさらに利益を出せる見通しがついたのであれば、改めて勝負に打って出るよい機会でしょう。
黒字化と言えば、前回のワールドカップで放映権を獲得したABEMAも最近になって四半期ベースで黒字化を達成していますので、同様のことが言えるかと思います。ただ、一度やったABEMAが二度目のブーストに価値を感じるかどうかですね。
もしDAZNが前向きとなれば、博報堂との関係が再度クローズアップされてきます。DAZNにはもともと電通が10%程度出資していたとされますが、度重なる増資によって持ち株比率はかなり希薄化されたものと推測されます(売却はしていないようですが)。そこに、電通と入れ替わる形でワールドカップの代理店になると言われている博報堂が入り込み、DAZNと提携を結んだわけですから、やはり関係があるのでは・・・と注目せざるを得ません。
FIFAと博報堂が交渉しているという記事を出したのも日経ですから、おそらく日経は何かしらの情報を握ったうえで笹本氏にインタビューしているのでしょうし、笹本氏もそれを利用して何かしらのメッセージを送っているようにも見えてきます。ただ、基本的には資金力の勝負なわけですから、これをもってDAZNにアドバンテージがあるとは言えない状況です。
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