【続報】WBC、Netflixが独占配信。地上波なしの衝撃
今朝7時すぎに、NetflixとMLBから正式にプレスリリースが出されました。来年(2026年)に開催されるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)について、日本ではNetflixが全試合を独占ライブ配信します。メディアの報道では、テレビ中継はないとしています。
前回までとは異なり、日本戦以外も含むすべての試合が1社にまとまることになります。サブライセンスにはあまり期待できません。あってもディレイでしょうか。
Netflixにとっては、日本向けにスポーツのライブ配信を行うこと自体が初めてとなります。これまではグローバルを対象に放映権を獲得したコンテンツが日本でも流される形でした。
https://about.netflix.com/ja/news/world-baseball-classic-inc-and-netflix-exclusive-partnership
PPVではなく、月額料金で視聴可能です。また、すべてのプランで視聴できるとのことですので、もっとも安いのは月額890円の「広告つきスタンダード」プランということになります。ただし、今後価格改定の可能性がないとは言えませんが。
また、他のプランを選択すれば広告がなくなるかと言うと、おそらくそうではなさそうです。Netflixの過去のスポーツ中継の例から言っても、試合中にCMが挿入されることになると想定されます。Netflixにとって広告事業は新たな収益の柱となりつつあり、その意味では現状考えられる最大級のコンテンツであると言えます。
昨日、この件をいち早く「独自」として報じた共同通信が続報の記事を出しています。これによると、当初は前回と同じくTBSとテレビ朝日で放送する形で動いていたところ、主催者が放映権料を大幅に引き上げてテレビ局は手を出せなくなったとのこと。
ここでいう主催者とはWBCI(World Baseball Classic Inc.)のことで、MLBの出資で作られた会社です。大会の運営はMLBと選手会が行っています。
読売新聞社が出した声明についても触れておきます。読売新聞社は東京ドームで開催されるWBC1次ラウンドの興行権を取得していますが、今回のNetflixの契約についてWBCI社が「当社を通さず、直接Netflixと契約した」とコメントしています。
裏を返せば、前回までは読売を通していたという話になるのですが、第一義としてはWBCの放映権はWBCI社にあるはずなので、ちょっと解釈がしにくいコメントとなっています。もちろん、道義的に話を通しておく必要があるのは分かりますが、別に読売が1次ラウンドだけバラ売りしているわけではなくいまいちピントが合いません。
なので、この発表には誰かに対する何かしらのメッセージでは・・・とも考えられます。もし、読売とWBCIのあいだに何らかのボタンのかけ違いがあるのであれば、今後トラブルに発展する可能性も出てきますので、注視していく必要があります。
あと、ハイライト映像について以下の記述がありますが、これは放映権を持たない放送局に対して提供される映像のことであり、他のスポーツ大会と扱いとしては変わらないものです。サブライセンス等を示唆するものではありません。
なお、NHK及び民間放送各局は、報道目的での試合映像は放映できますので、テレビニュースでは従来どおり試合のハイライトをご覧いただけます。
最初にアメリカ国内で報じられた記事では、電通の名前が出てきましたので、電通が代理店としてWBCの放映権を販売していると考えられます。少なくとも前回大会まではそうだったのでしょう。
改めて記事を読み直してみると、"currently"という表現が若干ひっかかります。文字通り読めば、現在もWBCの放映権は電通が代理店として販売していることになりますが、currentlyという単語には「いまのところは」という含みがあり、今回の交渉で電通が外された可能性も否定できません。Netflixのブレスリリースに電通の文字はありませんが、代理店の名前が書かれることはあまりないので、これだけでは判断材料となりません。
According to Puck’s John Ourand, Netflix is in serious talks to acquire the Japanese rights, currently held by advertising giant Dentsu, for next year’s WBC. The appeal is obvious
ただ、その場合でも広告事業において電通の存在は重要であり、侍ジャパンとの関わりを鑑みても、そして今後のNetflixの広告ビジネスを推進するためにも、電通がWBCのビジネスから完全に外されることは考えにくい状況です。電通がどのように関与しているかについては今後の情報を待ちたいと思います。
昨年12月、Netflixは日本国内の契約数が1000万件を突破していたことを明らかにしました。件数だけならAmazonプライムのほうが上回るかもしれませんが、ストリーミング専門でこれだけの規模となると、地上波に匹敵するメディアパワーを備えた存在になり得ます。もちろん、前回大会では瞬間的に40%を超える視聴率をあげたコンテンツですから、まだまだ増やしていく必要があるでしょう。
しかも、テレビと比較して年齢層が低く、そもそもテレビを観ない若者が増えているという現状をふまえれば、新規獲得という目的において必ずしもテレビでの中継が不可欠だとは言い切れません。そりゃ有料より無料のほうがいいでしょうけど、今回の試みは有料と無料のあいだにある厚い壁をかなり切り崩してしまう可能性すら考えられます。
アメリカでもいくつか報道が出てきていますが、現時点ではそんなに熱がこもっているようには見えません。対岸の火事くらいに思っているのでしょうか。ただ、速報の記事でも書いた通り、この動きはアメリカ国内におけるMLBの放映権にも影響すると個人的には見ています。
なお、アメリカ国内におけるWBCの放映権は、前回に引き続きFOXが獲得する見通しであるとも書かれていました。まだ正式発表ではありませんが、こちらにNetflixが食い込む可能性はいったん否定されます。
こうなると、今後さまざまな方面に影響が波及することが想定されるわけですが、来年の大きなスポーツイベントとしては、まずオリンピックがあげられます。オリンピックについては2032年までジャパンコンソーシアムが契約を結んでいるため、少なくともその間は新たな動きはないでしょう。
問題なのがFIFAワールドカップであり、電通に代わって博報堂の名前があがったかと思えば、今度は電通が巻き返しているといった報道もあり、今後の見通しが立たない状況です。
どちらの陣営が勝利するのか、そしてどの業者を担ぎ上げるのかによって今後の業界地図ががらっと変わる可能性があります。ただ、FIFAの意向としては無料放送をまったくなくすことは考えていないとのことで、少なくとも日本戦などの放送は残るものと考えられます。
【追記】
本稿執筆後、NPBとTBSからもコメントが出ていますので以下に追記します。
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