Netflix、Amazonと広告事業で提携 & ボクシング視聴者数

本題に入る前に、9月13日(現地時間)に開催され、Netflixでライブ配信されたボクシングのカネロvs.クロフォード戦について触れておきます。この試合のグローバルでの視聴者数はのべ4,140万人(アメリカ国内では2,030万人)と発表されました。


スポーツのライブ配信としてはかなり大きな数字ですが、Netflixとしては昨年11月に配信したマイク・タイソンvs.ジェイク・ポール戦の1億800万人と比較すると物足りない数字かもしれませんが、PPVではない形でビッグマッチを実現できたことは大きな実績です。


大規模な配信障害は報告されておらず、この程度のトラフィックであれば問題なくさばけることを証明したと言えます。来年のWBCについては日本国内で少なくとも2,000万人以上の視聴が見込めると考えられますが、そこは問題なさそうです。

で、ここからが本題なのですが、AmazonとNetflixが広告事業で提携したという話です。Amazonが提供する広告プラットフォーム「Amazon DSP」にNetflixが接続するというものです。


この話はとても難しく、筆者も完璧に解説できるものではないのですが、簡単に説明すると、広告主がひとつのプラットフォームを通じてAmazonとNetflixの広告を購入することができるようになります。とくに両社は動画ストリーミングにおいては競合関係にありますから、ライバルが手を組んだことになります。

この提携は、日本を含む11か国が対象となっています(アメリカ・イギリス・フランス・スペイン・メキシコ・カナダ・日本・ブラジル・イタリア・ドイツ・オーストラリア)。そもそもNetflixの「広告付きプラン」が提供されている国がまだ10数か国しかないそうですが。


Netflixが従来の方針を転換し、スポーツのライブ配信を手がけるようになった背景として、広告ビジネスへの参入があげられます。基本的にはグローバルを対象とした配信ですが、先日放映権獲得を発表したWBCは日本限定です。そうなると、今後特定の国に限定したコンテンツも獲得していく可能性がありますが、その場合も基本的には広告付きブランが提供されている国がターゲットとなるでしょう。

Amazonはユーザーの商品購入データを持っており、またNetflixが持つ視聴データはAmazonよりも細かいものと考えられます。両社が組むことで、よりユーザーの趣向にあった広告を配信し、ユーザーにとってはストレスがなく、広告主にとってはより効率的な世界をめざしていくことになります。


Netflixの広告ですが、CPM(表示1000回あたりの単価)は35~65ドルになるとのこと。すなわち、1回表示されるごとに約5~10円が課金されることになります。日本では物価や商習慣の違いによりもう少し低い水準になるものとみられますが、スポーツコンテンツに特化することでより単価を上げることもできるでしょう。


かりにWBC中継で同時に1,000万人が視聴すると仮定した場合、CM1本あたり5,000万円を超えてもおかしくありません。2,000万人が視聴すれば1億円ということになります。

上記は「広告付きプラン」のユーザーに対する広告ですが、それとは別にプランに関係なく挿入される広告もあると想定されます。こちらは、WBCというコンテンツ自体にスポンサーが付く形で、従来のテレビと似た考え方です。今後の戦場はインターネットに接続されたテレビ、いわゆる「コネクテッドTV」であり、この世界では地上波もストリーミングも同列に扱われるのです。


今回の騒動によって、国内のスポンサーがどれだけ集まるかは微妙なところもありそうですが、別に国内に限らず外資系の企業でもよいわけです。それを国内の広告代理店を通すことなく直接販売できるのであれば、テレビを含めて日本の広告業界全体に衝撃を与えることになります。そこにAmazonも乗っかってくるわけですから、純粋な脅威です。


WBCの放映権料については、メディアによって50~150億円と開きがあり、正確なところはまだ分かっていないのですが、もちろん全額は無理としても、広告によってある程度回収できるのであれば、今後日本国内でスポーツコンテンツをさらに獲得しにいくことは充分考えられます。

【お知らせ】現在コメント機能が使えない状態です。感想・意見・誤情報のツッコミ等ございましたら、筆者のX(旧Twitter)までお願い致します。 @flower_highway

0コメント

  • 1000 / 1000