【AERA】WBC問題で広島カープが再評価?

まぁ適当な記事だな・・・と言わざるを得ないのですが、「AERA DIGITAL」に掲載された以下の記事には一言二言申すしかないでしょう。


WBCの放映権をNetflixが独占した問題を契機に、広島カープの放送スタイルが再評価されているという内容なのですが、実際にそんなことを言っている人はいるのか。記事中に登場する取材先の人物だけではないのか。どうしてもそう感じてしまいます。

「今回改めて注目を集めたのが、広島エリアにおけるカープ戦の放映スタイル。規模や方式は異なれど、『ユニバーサル・アクセス権』のマイナー版。地元テレビ局が持ち回りで中継することで、地上波での無料観戦ができる」(在京テレビ局スポーツ担当)


ユニバーサル・アクセス権という言葉がえらい軽い意味で出てきます。WBCがユニバーサル・アクセス権の対象となる「公共性」を備えているかという論点は過去にも触れましたが、いちおう国際大会ですからその意義は大きいと言ってよいかと思います。ただ、広島の皆さんにカープの試合を見せることは、単純にビジネスの問題でしかありません。


筆者は広島在住ではないので、別に文句をつける気もないし、その資格もないとは思いますが、広島の皆さんがカープの放送に心底満足しているかどうかは疑問です。阪神戦を試合終了まで放送するサンテレビとは違って、放送枠には限りがあり、試合途中で終わればラジオを聴くことになります。これは、かつての巨人戦と同じオールドスタイルです。有料でよければJ SPORTSという選択肢があるだけましですが。


あともうひとつ指摘すべき点は、ビジターの試合はテレビであまり中継されず、やはりラジオ頼みになることです。相手があってこそのリーグ戦であることを忘れてはなりません。

「一時期(2016年頃)はDAZNでカープ戦を見ることもできた。しかしそれによって地元テレビ局の視聴率が激減したとされ、関係性を絶ったのは仕方ない部分もあったのだろう」(スポーツマーケティング会社関係者)


これもかなり適当な発言だと言わざるを得ません。DAZNは2016年に日本でサービスを開始し、2018年までカープ戦を配信していたことは事実ですが、「広島県内では視聴不可」となっており、IPアドレスによって制限がかけられました。DAZNのせいで地元テレビ局の視聴率が激減することはまず考えられません。


広島はDAZN以外でも縛りをかけていました。J SPORTSオンデマンドでは2021年まで制限がかかっていましたし、「ひかりTV」などのIPTVでも制限がありました。

カープはDAZNとの契約を更新せず、2019年から現在に至るまで配信されていません。カープが更新しなかった理由については諸説ありますが、どれが正しいを確定できるものではなく、おそらく複合的なものでしょう。


2019年に出た以下の記事では、DAZNが広島県内での制限を取り除くことを主張し、折り合わなかったとしていますが、交渉決裂に至るほどの決定的な理由かと言われると疑問です。だってやってたんですもん。それよりも他の理由を想定したほうがよいです。単に金額だけなら積めばいいのですから、それだけじゃないと思いますけど。

「NPBはMLBや他競技のように、“放映権一括管理”をして多額の放映権料を手に入れたい。サッカー・Jリーグは同方式でDAZNと契約、各クラブへの分配金も豊富になった。しかし(プロ野球においては)広島が首を縦に振らないので、話が進まない」(在京テレビ局スポーツ担当)


NPBが放映権一括管理を望んでいる、という言説は初めて聞きました。もし本当なら興味深いものがあります。そして、それを阻んでいるのがカープという話になるのですが、カープ以外にも反対してそうな球団はいくつか思いつきますので、これが事実なのかは分かりません。


パ・リーグ6球団はインターネット向けの配信権を一括管理しており(テレビは個別管理)、DAZNを含む数社に販売。自ら「パ・リーグTV」も運営しています。もし12球団での一括管理を実現するならば、セ・リーグがこの流れに乗るのが近道でしょう。


もし実現すれば、それこそNetflixに独占販売することもできたかもしれません。JリーグとDAZNの契約が年間200億円程度と考えれば、それ以上の金額は提示できるでしょう。その努力を怠った結果、WBCをNetflixに持っていかれる事態を招いたわけですから、これをもってカープを再評価するという文脈自体がよくわからないのです。

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