DAZN、昨年も赤字で累積損失1兆円突破。
DAZNの2024年度の決算報告資料が、イギリス政府のWebサイトに掲載されました。前回(2023年度)の資料が公開されたのは今年1月のことだったので、今回は3か月ほど前倒しになっています。
もちろん情報公開は早いほうがよいことなのですが、なぜ早まったのでしょうか。おそらく、今年に入ってサウジ資本(SURJ)による出資や、オーストラリアのFoxtelの買収といった大きなイベントがあったため、ステークホルダーが増えたことが理由かと思われます。
DAZNの2024年は8.97億ドルの赤字 (前年比+4.9億ドル)
グループ全体の損失は9.61億ドルで、前年(14.59億ドル)から約5億ドル改善しました。
最終損失は8.97億ドルで、前年(14.88億ドル)から約5.9億ドルの改善です。
改善されたのはいいのですが、引き続き赤字であることには変わりません。2024年はいくつかの市場で黒字転換したという情報が流れていましたが、グループ全体としてはまだまだです。
売上は3億ドル増だが、放映権料などのコストは微減
売上は31.86億ドルで、前年(28.63億ドル)から3.2億ドルの増加です。
放映権料のコストは30.49億ドルで、前年(31.2億ドル)から0.8億ドルの減少です。
2022~24年にかけて、DAZNは積極的な値上げを実施してきましたが、売上は前年比10%強の増加となっています。値上げによる増収の一方で、離反もそれなりに出たものと思われます。その一方で放映権料などのコストは減っており、投資はいったん鳴りを潜めています。
コストの合計は40.6億ドルなので、放映権料はそのうち約75%を占めている計算です。放映権=仕入れと解釈すると、粗利が25%しかないわけですから、ビジネスとして成立するの?と疑問を抱いて当然のレベルです。損益分岐点さえ超えてしまえば、その後はどんどん利益が伸びていくのですが・・・なんともハイリスク。
APACの売上は1割ほど増加だが、円安の影響も
APAC(アジア太平洋)の売上は約3.3億ドル(前年比+0.3億ドル)でした。ただ、2024年はさらに円安が進んだ年でもあります。年末時点での為替レートで計算すると、408億円→518億円に増えた計算になります。
APACは日本だけでなく、Eleven Sportsの買収によって台湾の市場も含まれます。2025年にはFoxtelの買収でオーストラリアも大きくなるため、この指標で日本市場の規模を判断することは今後できなくなるでしょう。
親会社からの支援は5.87億ドル。通算では70億ドル超え
DAZNの親会社であるAccess Industriesからは、2024年に5.87億ドルの支援を受けたことが記されています。2021年末には43億ドルの支援を受け、いったん債務を一掃したのですが、それ以降も赤字続きで支援が止まっていません。創業からの通算は70億ドルを超えました。日本円だと1兆円を超えるとんでもない数字です。
それでも、この決算書が承認されてから12か月は引き続きAccess社が支援を続けるという記述があります。もしかしたら、この件も提出が早まった理由のひとつかもしれません。
電通は3.6%の株式を保有。ただし2025年は希薄化の見込み
2024年末において「Z株」と称される株式が3.61%発行されていることが確認できます。前年の3.60%からほとんど変わっていません。
このZ株ですが、電通の子会社であるGlobal Sports Investments社が保有していることが分かっています。なので、この時点ではまだ電通は株式を売却したりしていないことが分かります。
上述の通り、2025年にはサウジ資本のSURJが株式の10%を取得しています。また、Foxtel買収の際には、Foxtelの親会社であるNews Corpに対して約6%、Telstraに約3%のDAZN株式を交換しています。そのため、電通の持ち分はさらに希薄化しているものと思われます。
今後の見通し: クラブワールドカップの投資は吉と出るか
2025年は新たな株主を迎え入れた以上、赤字体質の脱却は必須と言えます。買収したFoxtelは黒字会社なので、連結決算にはプラスに働くものと推定されます。
昨年はコストが削減されてましたが、今年は積極的な姿勢に転じています。FIFAクラブワールドカップのグローバル放映権には10億ドルを費やしたとされます。無料配信ですから、ある程度の広告収入があったとしても赤字なのは間違いないでしょう。
これをふまえると、2025年の決算でも黒字転換は厳しいと思われますが、それを見越してAccess社からさらなる支援のコミットメントを取り付けたのでしょうし、さらなる投資の受け入れも充分に考えられます。
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