さらばDAZN F1中継。「LUCKY!」も今年限り

今年のF1最終戦・アブダビGPが終了し、2016年8月から始まったDAZNのF1中継が終了となりました。まだ関連番組は残っていますが、ライブ配信はここまでです。


また、今回の放映権問題とは直接関係があるかは不明ですが、ドキュメンタリー「LUCKY! F1界のドン バーニー・エクレストン 光と影」の配信も年末までとなるようです。今年5月にこの世を去られた小倉茂徳さんが字幕監修を手がけた作品で、F1 75年の歴史を振り返るのもよいかと思います。

DAZNがF1中継を開始したのは2016年8月のベルギーGPからで、約9年半続きました。これまで放映権の移動をさんざん見てきた筆者ではありますが、今回はさすがに感慨深いものがあります。もとはフジの中継に出演していた小倉さんが新たに育てあげたものが引き継がれないというのは悲しいものです。


単に放映権が他社に移動するだけであれば、制作スタッフは引き継がれることも多く、コメンタリー陣も専門性が求められるのでスライドするケースはよくあるのですが、今回のF1については2社が共存していたものが1社に絞られる珍しいケースです。


DAZNでは、今年春にゴルフ・JLPGAの権利を失っていますが(U-NEXTとの共存→独占)、映像はJLPGA自らが手がける公式のものであり、DAZNもU-NEXTも同じものを使っていましたのでここまでのダメージはありません。フジは自社アナウンサーを実況に使いますので、サッシャさんや笹川さんらの席は基本的にありません。そういえば、笹川さんはJLPGAの実況もされていますね。

もともと2社が並立すること自体がレアケースだったわけです。こうなったきっかけは、2016年にFOX Sports Asiaが日本を含む26か国・地域における独占放映権を獲得したことにさかのぼります。2022年までの7年契約でした。


当時のプレスリリースがF1公式サイトに残されています。FOXは日本・インド・シンガポール・台湾にスタジオを置き、F1の生中継を行う予定でした。

https://www.formula1.com/en/latest/article/fox-sports-and-star-sports-extend-f1-agreement-in-asia.7KRbA1OpXnZSaTAft7Pbo9

FOXは主に東南アジアでスポーツ中継の拡大をはかっており、日本市場もターゲットにしていました。フジテレビはF1のほか、サッカーのブンデスリーガの権利もFOXに奪われています。しかし、FOXは自社での制作を断念することとなり、権利をサブライセンスする方針に切り替えたのです。


そこで権利のすき間が生じたようで、フジは改めてテレビ中継の権利を獲得することができましたが、インターネット配信の権利が浮くこととなり、サービス開始を計画していたDAZNが持っていくこととなりました。

その後、ディズニーによるFOXの買収により、FOX Sports Asiaは撤退しています。この時点で契約が継続される可能性はなくなり、2023年からの新たな契約はF1と直接行うことになります。今度は一本化されるのではと思われましたが、ふたをあけるとフジ・DAZNともに3年契約を結ぶという、これまた異例の決着となりました。


こうなった背景もまた謎なのですが、フジもDAZNも独占できるほどの余裕はなかったのだと推測します。また、DAZN側は独占にこだわっていなかったのでしょう。スポーツ専門のサブスクであるDAZNは、まずラインアップの充実が最優先であり、コストをかけてまで独占する意味は薄いです。それよりも「F1 TV Pro」の解禁を阻止するほうが大事だったのではないかと、勝手に想像しています。

来年からフジテレビが独占となりますが、どの業者が獲得するにしろ、本来の姿に戻ったというのが適切な表現かもしれません。何が両社の明暗を分けたのかは知る由もありませんが、フジとしては地上波も交えて露出を増やし、再度F1ブームを作りたいという思惑があります。F1側もその意欲を買ったのでしょう。不祥事で揺れ動いたフジ社内のパワーバランスの変化と、契約の切れ目がちょうど合致しました。


対してDAZN側は視聴データもきちんと分析しているでしょうから、出せる金額の上限は算出しているはずです。AppleやNetflixなどの参入も噂される中、コストパフォーマンスに見合わないというロジカルな決定だったように見受けられます。すべて妄想ですが。

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