WOWOW、スポーツの窮状を語る。全豪OPは継続
WOWOWのスポーツ事業局長である戸塚英樹氏へのインタビュー記事が「VICTORY」に掲載されています。
体裁としては、テニス・全豪オープンの中継に関するインタビューなのですが、ここ数年でスポーツの放映権を続々と失っているWOWOWの苦しさが見え隠れする内容となっています。
全豪オープンの中継は1992年開始で、来年35周年を迎えます。今年9月には主催者であるテニス・オーストラリアとの契約延長が発表されました。テレビとインターネットを包含しており、テレビでは1日14時間以上の放送。ネットでは全試合をライブ配信します。
主催者は長年のパートナーシップに最高の称賛を送っています。30年以上にわたる放送が最大に報われたのは、2019年の大坂なおみ選手の優勝でしょう(2021年にも優勝)。日本人選手がまだまだ少なかった時代から、伊達公子選手、錦織圭選手などの時代を経て、ようやく果実を得ることができたのです。
しかし、戸塚局長の発言には弱気が漂います。実際、テニスの放映権も徐々に失いつつあり、ATPツアーやデビスカップの権利がU-NEXTに移動しました。しかし、グローバル企業が大々的に権利を獲得する流れはまだ来ていないと戸塚氏は言います。しかし、裏を返せばその波が来てしまえばもう太刀打ちできないということです。
WOWOWの長所は、テレビ局らしい丁寧な番組作りにあると言えますが、最近はその長所も評価されなくなっている現状があります。現地での独自映像を交えて中継してきたゴルフのLPGAツアーも今年限りでの終了が発表されました。
解説が付かない、それどころか日本語の実況も付かない国際映像垂れ流しの配信があふれています。もちろん中継されないよりはマシだとも言えますが、果たしてこれでよいのか。放映権料が高騰する流れでは、コスト削減も正当化されてしまいます。
ひとつ明るい材料をあげると、先日発表されたドコモとの提携でしょうか。ドコモは当初WOWOWに出資する方向で動いていたとのことですが、法的な制約もあってコンテンツの共同制作や相互供給にとどまっています。スポーツでは、すでにドコモのNBAとWOWOWの欧州CLを相互にライセンスしており、終わるかと思われたNBA中継が復活しました。
来年のFIFAワールドカップではドコモとDAZNが共同で放映権を獲得することが有力されており、今後はDAZNも含めた3社連合が形成される可能性もあります。また、WOWOWは民放各局が共同出資している会社であり、民放キー局の傘下である配信サービスとも提携、あるいは統合が進んでいくものとみられます。
その流れの中で、もしかするとWOWOWは放送局としての役目を終えてしまう可能性もあるかもしれません。しかし、コンテンツの制作ノウハウはどこかに引き継がれていきます。
最後に、VICTORYの記事についてひとつ指摘をせねばなりません。男子のATPツアーの放映権がU-NEXTであることは触れましたが、女子のWTAツアーをDAZNが配信しているというのは正確ではありません。DAZNも今年から配信を停止しているからです。
もともとDAZNとWTAは提携しており、映像制作と放映権の配給業務を行っています。DAZNとしては権利をよそに売ったほうがよかったのかもしれませんが、結果的に日本では自社で配信していました。それすらも今年はやめてしまったことになります。
しかし、この契約も2026年までに終了することが決まっています。その後は、投資会社のCVCキャピタルパートナーズから出資を受けた新会社「WTA Ventures」に移管されます。また、ATPツアーとの協力関係も進んでおり、将来は放映権の共同販売、さらには男女ツアーの統合にまで発展するかもしれません。
それでも四大大会(グランドスラム)の放映権は引き続き主催者が管理しているため、WOWOWでの放送が継続される可能性は残っているのですが、ゴルフでは男子の四大大会がすべてU-NEXTに行ってしまいました。WOWOWの未来はいずこへ。
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