【速報】ESPN・FOX・WBDが連合。ストリーミング統合へ。

ESPNを傘下に持つディズニーと、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー(WBD)、そしてFOXの3社は、スポーツのストリーミング配信を手がける合弁会社を設立し、今年秋にもサービスを開始すると発表しました。新しいサービスの名称や価格設定などは、現時点では明らかになっていません。

アメリカのエンタメ産業は競争激化の一途をたどっており、とくにストリーミングにおいてはAmazonやAppleと激しい競争を強いられています。先日はNetflixもWWEとの契約を発表し、本格的にスポーツに進出してきました。

そのあたりの事情は昨年末にも一度まとめてはいるのですが、2月の段階で早くも合従連衡の動きが出てきたことになります。

スポーツ中継はCATVとともに発展してきた経緯から、既存の放送局はストリーミングへの進出に苦慮してきました。昨年破綻したBally Sportsの事例は最たるものでしょう。3社の中でも、とくにFOXは傘下に無料サービス(いわゆるFAST)のtubiを抱えているものの、有料のストリーミングサービスを持っていません。

ESPNも「ESPN+」を展開してはいるものの、これはESPNで放送していないコンテンツを配信しているものであり、ESPNを補完する位置づけです。

2025年にはESPNが自前のストリーミングサービスを開始するとも報道されていました。これによって視聴者に直接課金するモデルができるわけですが、CATV業者にとっては面白いわけがありません。スポーツの放映権料はCATVに支払われる料金によって支えられてきましたから、直接課金に移行した場合、料金が従来よりも跳ね上がる可能性もあります。

さらに、ディズニー傘下のHuluはCATVチャンネルをストリーミング配信する「Hulu Live TV」を展開していたりします。買収を繰り返した結果ではあるのですが、サービスの交通整理が難しくなっているのが現状です。

WBDは昨年10月、傘下の「Max」の中でスポーツのオプションサービス「Bleacher Report Sports」を開始。今年3月から有料化を予定しています。よって、今回の3社の中ではもっともストリーミングに舵を切った会社だと言えます。

とは言え、WBDも経営環境が厳しいことには変わりなく、昨年末にはParamountとの合併交渉を行っていることが報じられています。もし合併が成立した場合、将来的には米4大ネットワークのうち、ABC(ディズニー傘下)・CBS(Paramount傘下)・FOXの3つが連合を組むことになりますから、それはそれですごい話ですが。

今後の展開ですが、まずこの計画自体が政府当局に承認されるかどうかです。なにせシェアが大きすぎる話なので、簡単に認めるとは考えにくいです。

そして、もうひとつは価格設定です。最初に紹介した記事の中では、月80ドルを上回る可能性があると予想しています。そうなるとスポーツ以外のコンテンツには関心ありません、という人にしかメリットがないサービスとなります。

Pricing will be announced at a later date, but the companies will likely look for an monthly subscription that is more than a consumer would pay for a standalone regional sports network, which costs $20 to $30 per month, and a larger digital programming package such as Hulu Live or YouTubeTV, which cost around $75 to $80 per month, according to a person familiar with current discussions.

観たいコンテンツにしかお金を払いたくないというのは消費者心理としては当然なんですけど、サービスがその声に寄り添いすぎると、他のコンテンツに触れる機会がなくなり、将来的にはタコ壺化するリスクがあります。ですから、同時にFASTなどで無料で観られるコンテンツを提供していくことも同時に求められるのでしょう。

莫大な放映権料をスポーツのファンだけに負担させるとどうなるのか。ある意味壮大な実験が始まることになります。スポーツも数多あるエンタメの1ジャンルにすぎず、この結果次第ではスポーツそのものの地盤沈下につながることも充分あり得るわけです。

【追記 2/8】

上記の記事ですが、修正されていることを確認しました。RSNの月額料金である20～30ドルよりも高く、Hulu Live TVやYouTube TVの75～80ドルよりも安い水準になるのでは、としています。

他媒体の記事もいくつか読んでみたところ、予想としては35～55ドルあたりとなるようです。もちろん、最初は安く設定して、その後上げてくることは充分考えられます。

Pricing will be announced at a later date, but the companies will likely set a monthly subscription that is more than a consumer would pay for a standalone regional sports network, which costs $20 to $30 per month, and less than a larger digital programming package such as Hulu + Live TV or YouTube TV, which cost around $75 to $80 per month, according to a person familiar with current discussions.