日本7-0の圧勝劇と中国サッカーの黄昏。
7-0の圧勝となった、先日のサッカーワールドカップ最終予選・日本vs.中国戦ですが、テレビ朝日の視聴率は16.0%だったと発表されています。内容が内容だけに安心して見られたのがいい数字につながったと言ったところでしょうか。
逆に中国はほとんど何もできず、この弱体化は敵ながら心配になります。中国では無料放送がなく、百度(バイドゥ)傘下のストリーミングサービスである「iQIYI Sports」での有料配信でした。なので、アウェー戦はDAZN独占となっている日本と似たような状況ではあります。
今年1月に開催されたアジアカップは国営放送のCCTVで無料放送されていましたが、今回はサブライセンス契約に至らなかったとのこと。中国はグループステージ敗退に終わっており、サッカー熱が相当低下しているようにも思われます。CCTVは「放映権料が高すぎる」との声明を出したそうですが、その本音はいかに。
そのiQIYI Sportsなんですが、アクセス障害が発生したと報じられています。結果的に観られなくてよかった・・・というのはなんとも皮肉な話。
改めてこの件について深堀りすると、まず最終予選の放映権はAFCが管轄しています。AFCは2018年に中国系の代理店であるFMA(Football Marketing Asia)と契約を結び、2021~28年の8年間の放映権を販売することになります。契約金は8年間で20億ドル以上と言われています。
中国ではFMAの系列会社にあたるSSM(Super Sports Media)が権利を獲得していたのですが、中国のサッカーバブル崩壊などの影響で窮地に追い込まれ、放映権料を払えなくなってしまいます。その結果、2022年11月にiQIYI Sportsに権利が移されることとなり、現在に至ります。
SSMが窮地に陥るということは、FMAも苦しいと言うことです。その後、2023年9月にAFCは契約を破棄しました。現在は、FMAから事業を引き継いだと思われるAFG(Asia Football Group)という代理店がAFCの放映権を販売しています。
アジアのパワーバランスにおいても最近はカタールやサウジアラビアが台頭し、チャイナマネーはすっかり影を潜めています。次回からの出場枠拡大は中国を出場させるため、なんてよく言われていましたが、正直なところAFCとFIFAも中国をあてにはしていません。それゆえに、今回の大敗劇はなんとも物悲しいのです。
話を日本に戻すと、FMAとテレビ朝日の交渉が決裂。他にも名乗りをあげる会社はなく、日本向けの放映権は暗礁に乗り上げます。業を煮やしたAFCは、FMAから日本向けの権利を切り離し、電通との契約に踏み切りました。電通はDAZNを巻き込み、DAZNが放映権を購入し、ホーム試合のみをテレビ朝日にサブライセンスするという現在の形を作ったことで、この問題はいったん解決したのです。
アウェーがDAZN独占となっていることで、DAZNが放映権料をつり上げたせいだと非難する声が出てきていますが、かと言ってDAZNが大枚をはたいたかというとそうでもありません。以下の記事で経緯をまとめましたが、現在の放映権料は前回のサイクルから60%下落したとの報道があります。
ですから、放映権料をつり上げたのはDAZNではなくその前ということになります。販売したのはフランスのラガールデール社(現在のSportfive)、購入したのはテレビ朝日です。裏を返すと、60%下がってもテレビ朝日(および他のテレビ局)が買えなかったのですから、それだけ地上波が苦しくなっているとも言えるわけですね。
次戦のアウェー・バーレーン戦について、JFAの宮本会長は「たくさんの人に見てもらえる状況にするというのは、サッカー協会としてやれることだと思います。全くやっていないわけではない」とコメントしたとのこと。
ただ、できることは限られており、サブライセンス料をJFAが一部負担するとか、一緒にスポンサーを探すといった程度ではないかと思います。田嶋前会長のときもそうでしたが、正当な権利を持っているDAZNを蔑ろにした発言を繰り返せば、いずれしっぺ返しを食らわないか心配になってきます。
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