英Skyが「Max」バンドルへ。どうなるTNT。
アメリカのCATV大手であるComcastと、WBD(ワーナーブラザーズ・ディスカバリー)は、既存の業務提携を2026年以降も延長することを発表しました。
しかし、この契約の中身は複雑怪奇なものとなっています。筆者も到底すべてを噛み砕いて簡単に説明することはできません。というのは、Comcast・WBDともに傘下に多くのメディアを抱えており、またWBDは旧ワーナーと旧ディスカバリーの合併によってできた会社ですので、さまざまな契約が絡み合っているからです。
アメリカではComcastが提供するCATVサービスに、WBD傘下のチャンネルであるTNT・CNN・ディスカバリーチャンネルなどが引き続き提供されます。WBDは2025-26シーズンからNBAの放映権を失うことが確定しており、この交渉においても条件には大きく影響したものと想定されますが、それでも契約を維持できたこと自体に価値があります。
イギリスでは、WBDのストリーミングサービスである「Max」が2026年に開始され、Comcast傘下のSky加入者には広告付きプランがセットで提供されるとしています。
Maxは、旧ワーナーの「HBO Max」と旧ディスカバリーの「discovery+」を統合したサービスであり、アメリカやヨーロッパの一部の国ではすでに提供されていますが、イギリスではSkyが旧ワーナーと2025年までコンテンツの供給契約を結んでいることから、2026年以降どうなるかが注目されていました。
スポーツにおいては、Sky SportsとBT Sportsが放映権を争う構図が続いてきました。プレミアリーグの権利は両社にAmazonを加えた3社が保有していますが、2025-26シーズン以降はAmazonが撤退し、また2社体制となることが決まっています。
2023年、BTの事業再編計画に絡み、BT Sportsはディスカバリーと合弁会社を設立し、名前を「TNT Sports」に改めました。ディスカバリーの傘下であるユーロスポーツのコンテンツを加えることで、より強固なスポーツチャンネルとなっています。イギリスではユーロスポーツのブランドが消滅し、TNT Sportsおよびdiscovery+での放送・配信となっています。
ここで気になるのは、Maxにはdiscovery+のコンテンツが入るわけですから、必然的にTNT Sportsのコンテンツも配信されるはずでは?ということです。そうなると、Skyの契約者にとっては追加料金なしでMaxが視聴できることになります。
視聴者にとっては喜ばしい話である一方、プレミアリーグを始めスポーツの各団体にとっては実入りが減る話となります。もしかしたら、Maxはセットで提供すると言いつつも、Skyの料金を値上げすることで調整するようなことも考えられます。また、イギリス当局が独占禁止の観点からこの提携を認めないという展開もあり得る話です。
話を日本に転じると、日本でも旧HBOのコンテンツはU-NEXTと独占供給契約を結んでいたため、WBDが自ら「Max」を展開することはできない状況です。今年9月、U-NEXTとWBDは提供を強化し、旧ディスカバリーのコンテンツも独占供給となり、U-NEXTの中で「Max」ブランドを展開する形となっています。
スポーツにおいては現時点ではあまり関係のない話ですが、旧ディスカバリーが保有している放映権のうち、日本向けの権利もあるものについては今後U-NEXTで配信される可能性も残されています。具体的には2輪のEWCや自転車関連などがあげられます。あまり期待せずに待つことにしましょうか。
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