【本の紹介】『Jリーグ再建計画』(2014年)
年末年始に読んだ本ということで、今回は『Jリーグ再建計画』の紹介です。
2014年に刊行されたこの本は、1月末でチェアマンを退任した大東和美氏が編集を手がけ、彼に代わってチェアマンに就任した村井満氏への「引き継ぎ書」といった内容になっています。この2014年という年は、まさにJリーグにとって危機的な年だったと言えるでしょう。
地上波でのテレビ中継は消滅し、スポンサーの撤退も続いたことで、この年から広告代理店を博報堂から電通に変更しています。そして、2015年からは2ステージ制とポストシーズン(チャンピオンシップ)を復活させることにしたのです。
その一方でJリーグをめざすクラブは増え続け、この年からJ3が創設されています。規模は拡大しているのに売上が伴わない状態で、まさに「再建」が必要とされたのです。
ポストシーズン復活の決め手となったのは、このままだと13億円の減収が見込まれるという試算が提示されたことによります。チャンピオンシップを開催すればスポンサーも付き、地上波で放送できるので放映権料も入るというわけです。もちろん、それが「理想」とはかけ離れていると認識はしていましたが、それでもやらざるを得なかったわけです。
チャンピオンシップは2015,16年に開催され、2017年からは廃止されています。ちょうどDAZNとの放映権契約が始まった年なので、DAZNマネーによってチャンピオンシップが廃止できたことになりますが、後に村井満氏は著書『異端のチェアマン』の中で、ACLのスケジュールとの兼ね合いが主な理由であり、DAZNとの契約は「異なるレイヤー」であると述べています。
『異端のチェアマン』はちょうど1年前に取り上げました。順番が逆になってしまいましたが、この本は『Jリーグ再建計画』のアンサーとして読み直してみるのがよいかと思います。
JリーグがDAZNと契約したことで「地上波の露出が減った」的な批判がよく出るのですが、こんな記述を見つけた時には思わず笑ってしまいました。スカパー時代にも同じことを言う人がいたのですね・・・
よくJリーグファンが「スカパー!のせいで地上波の露出が減った」とこぼすのは言いがかり以外の何物でもない。分かりやすく言うと、Jリーグにはテレビスポンサーがつかず、地上波テレビ局は放映権料を捻出できないからスカパー!が放映権料を補っている、というのが正しい認識である。
スカパーが当時支払っていた放映権料は年間50億円程度とされます。また、映像制作もスカパーが行っており、当時はJ3が全試合放送ではなかったとはいえ、数十億円の追加支出があったものとみられます。それでも赤字だったというのが悲しい現実です。
DAZNが参入した2017年の放映権料は年間160億円程度とされますが、これを機に映像制作はすべてJリーグが自ら手がけるようになり、また映像の著作権管理も自ら行う体制が整えられました。なので、DAZNは映像制作費を負担していないことにご留意ください。
若干話がそれましたが、この本には「アジア戦略」や「秋春制」への言及もあり、DAZNマネーによって若干懐は潤ったとは言え、まだまだ課題は山積みだと言えます。アジアから獲得している放映権料は決して高いとは言えません。欧州との格差はさらに広がり、また中東が台頭してきています。
こういった、いわば永遠の課題について、村井前チェアマンが、そして現在の野々村チェアマンがどのように向き合い、どんな決断をしてきたか。みんなが注視し、そして参加することによってJリーグは発展していくのです。
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