Venu断念でFOXが独自配信に舵。ディズニーも姿勢転換。

ディズニー(ESPN)・FOX・WBDの3社合弁によるVenu Sportsの構想が崩壊してから1か月近くが経過しました。3社の中で、唯一有料のストリーミングサービスを持っていなかったFOXは、年内にもサービスを開始したいとの意向を示しています。


FOXはかつてhuluに30%出資していましたが、エンターテインメント部門をディズニーに売却したことにともない撤退しています。FOXで放送されたコンテンツは現在もhuluで配信されていますが、翌日以降のディレイとなっており、スポーツやニュースなどのライブコンテンツは提供していません。

無料サービスである「Tubi」については順調に伸びているとのことで、昨年の売上は前年比で30%増加。2027年には黒字化できるとしています。まもなく開催されるスーパーボウルは、FOXが今年の放映権の順番であり、初めてTubiでもライブ配信すると発表されました。


それでも、CATVを解約したいわゆる「コードカッター」対策として有料サービスは必要であり、そこには主にスポーツやニュースのコンテンツが並ぶことになります。FOXとしては独自のコンテンツは用意せず、追加コストをかけない形でやっていくようです。次の大きなイベントとしては、2026年のFIFAワールドカップが待っています。


FOX Newsは保守的な言論で知られており、トランプ大統領の再就任は彼らにとっては追い風と言えます。Venu Sportsの頓挫を糧にして、早期に立て直しを図りたいところです。

ディズニーはもともとVenu Sportsとは別に、ESPN単独でストリーミングサービスを開始する計画を明らかにしていました。こちらは予定通り、今年中に開始される予定です。ディズニー内では"Flagship"と呼ばれる重要なプロジェクトなんだとか。


現在、ESPNはCATV等のチャンネルとして提供されています。ストリーミングの「ESPN+」は、ESPNに入りきらなかったコンテンツを提供するという位置づけですが、新しいサービスでは従来のESPNで放送されていたコンテンツも配信されることになります。


また、従来CATV等の業者に対しては基本料金のパックの中にESPNを組み込むことを義務付けていたそうですが、Venu Sportsの頓挫にともない方針を転換。それ以外のパッケージについても認めていくとのことです。先の記事でも書いた通り、ディレクTVやComcastからスポーツチャンネルに絞り込んだパッケージが開始されています。


ディズニーも、先日買収したFuboを、自らの「Hulu + Live TV」と統合したうえで再編する予定です。そこでは、チャンネル数を絞り込んだ安価なパッケージが提供されることになると考えられます。もっとも、安価と言ってもESPN単独で20ドル以上すると想定されているので、結構なお値段にはなりそうですが。

ディズニーのボブ・アイガーCEOは、柔軟なパッケージが提供されるようになったことでVenu Sportsが不要になった・・・というニュアンスの発言をしていたそうですが、さすがにこれは時系列が逆なんじゃないかと記事では皮肉られておりました。


水面下ではFuboとの訴訟に勝てる見込みは薄いと判断し、撤退戦が始まっていたのではないか、というわけですね。ディズニーはFuboを買収することで訴訟を取り下げさせるという荒業を繰り出したのですが、これはVenu Sportsをゴリ押しするためではなく、各社が落としどころを探っていたのではないかという見方です。この推察もまた面白い。

【お知らせ】現在コメント機能が使えない状態です。感想・意見・誤情報のツッコミ等ございましたら、筆者のX(旧Twitter)までお願い致します。 @flower_highway

0コメント

  • 1000 / 1000