伊DAZN、1クラブ限定プランの発表で波紋?

イタリアのDAZNは、今週末のセリエA開幕に合わせて料金プランの改定を発表しました。選択したセリエAのクラブの全試合を視聴できる「DAZN MyClubPass」が大きな目玉となります。8月31日までの期間限定プランとなっています。

また、既存のプランについても名称を変更していますが、価格については据え置きとなっています。最新の価格改定は2024年1月に実施されたものです。

肝心なのは「MyClubPass」でどれだけ安くなるかなのですが、まずMyClubPassは年間契約が前提となっています。これは日本における「DAZN Baseball」と同等の扱いです。そのうえで、スタンダードなプランである「DAZN Full」との差額は月々払いで5ユーロ、一括払いで30ユーロとなっています。

ですから、正直言ってそんなに安くなるわけではありませんので、SNSにぶら下がっているイタリアのDAZNユーザーからの意見も批判的なものが多く見受けられます。

このような「好きなチームの試合以外は見ないので安くしろ」という意見はよくあるのですが、サブスクというサービスの性質からこれをやったところでさほど安くならないというのが現実です。DAZN側からすれば全クラブの全試合を提供する必要があることに何ら変わりなく、コスト削減にはつながりません。

それでもこういうプランを発表せざるを得なかったというのは、ちょっと政治的な匂いも感じます。偉いところからの圧力があったのかも。イタリアにおいてカルチョは政治ですから。

他のサービスの事例もみてみます。「MLB.TV」では、特定チームの試合を選べる「Single Team」プランは年額59.99ドルで、通常プランとの差額は10ドルでしかありません。

日本だと、チームではありませんが、J SPORTSオンデマンドが競技別の「ジャンルパック」を提供しています。こちらは月額2,580円で、「総合パック」との差額は400円です。こちらの例を参考にすると、割引率が20%を超えることはまずなさそうです。大きな割引率を提示することで新規会員を獲得できても、それ以上に既存会員が移行してしまえば意味がなくなります。

これらと比較すると「DAZN Baseball」の割引率は30%近くとなっており、かなり大きいことが分かりますが、これは競争相手がいるからゆえのことですね。あとは、全試合を提供できていない分、価値が毀損されているとも言えるでしょう。

イタリアのDAZNでは、2018-19シーズンからセリエAの放映権を獲得しています。最近の契約は2024-25シーズンからの5年契約であり、全試合の権利を持っています(毎節3試合は非独占)。放映権料は年間7億ユーロです。

日本のDAZNでもセリエAを配信しています。最新の契約は2024-25シーズンからで、公式では「複数年」と発表されていますが、代理店のinfrontが結んでいる契約が3年間のため、こちらも3年になるものと推定されます。

以下、今回発表された料金プランについてまとめました。

• DAZN Full (DAZN Standardから名称変更)
• もっとも基本的なプラン。PPVを除いたすべてのコンテンツが視聴可能
• 月額44.99ユーロ、年間プラン(月々払い) 34.99ユーロ、年間プラン(一括払い) 359ユーロ
• DAZN MyClubPass (新設、8/31までの期間限定)
• セリエAの選択したクラブの試合が視聴可能 (他はDAZN Fullと同様)
• 年間プランのみの提供。月々払い29.99ユーロ、一括払い329ユーロ
• DAZN Sports (DAZN Startから名称変更)
• サッカーを外した廉価プラン

• 月額14.99ユーロ、年間プラン(月々払い) 11.99ユーロ、年間プラン(一括払い) 99ユーロ

• DAZN Goal (DAZN Goal Passから名称変更)
• セリエAは毎節3試合に絞られるが、セリエBは全試合視聴可能
• 月額19.99ユーロ、年間プラン(月々払い) 13.99ユーロ、年間プラン(一括払い) 129ユーロ
• DAZN Family (DAZN Plusから名称変更)
• 2つの異なるネットワークから同時視聴できるパッケージ (他プランは同一ネットワークで2台まで)
• 月額69.99ユーロ、年間プラン(月々払い) 59.99ユーロ、年間プラン(一括払い) 599ユーロ