ディズニー対YouTubeTV、天上人の喧嘩勃発。
アメリカのインターネットテレビサービス(vMVPD)、YouTube TVとディズニーの契約が10月30日で切れ、ディズニーが運営するABCやESPN、FXといったチャンネルが配信停止となりました。
こういう話はアメリカではよくあることですが、スポーツシーズン真っただ中のこの時期に突如ESPNが観られなくなるというのはなかなかの大事です。YouTube TVは契約者に向けて20ドルのクレジットを提供すると表明しています。
両社のあいだでは今年5月にひと悶着が起きました。ディズニーの幹部であるジャスティン・コノリー氏(Justin Connolly)がYouTubeに電撃移籍したのです。どうやら、今回問題になっている契約切れが近づいていることも一因で、YouTube側としてはディズニーの内情を知る人物を引き抜くことで交渉を優位に進めたかったようです。
この問題は法廷に持ち込まれ、YouTube側の勝訴となっています。その後、両社は和解したとのことですが、条件は公表されていません。
ディズニーも傘下の「Hulu+Live TV」で同様のサービス(vMVPD)を展開しています。最近では同業のFuboを買収し、サービスの統合を実施しています。YouTube側としては、ディズニー自身が競合となるサービスを提供している以上、競争を妨げるような金額の提示は許されないという主張です。
この主張は同様の紛争では必ずと言っていいほど出てきます。独占禁止法に抵触するところで、提訴すればYouTube側に勝機があるようにも感じますが、目の前にある配信停止という現実を考えると、早期に事態を収拾する必要があります。
ESPNは今年8月に自前のストリーミングサービスを開始。従来のCATVなどにチャンネル提供するビジネスモデルからの脱却をはかっています。すべてのコンテンツが視聴できる「ESPN Unlimited」は月額29.99ドルに設定されました。ESPNとしてはYouTube TVの契約者に移行してもらえばそれでOKですし、「Hulu+Live TV」だとさらによいわけです。
なので、ディズニー側はだいぶ強気な態度に出ていると言えますが、そこに視聴者の存在はありません。一時的にはYouTube TVの会員向けに割引などのオファーを提供する可能性もありますが、これだけ交渉が揉めていることをふまえると、ESPNは近いうちに値上げを計画しているんじゃないか・・・とつい邪推してしまいます。
ディズニーは「Keep My Networks」というWebサイトを立ち上げ、YouTube TVの契約者に向けて代替となるサービスを提示したり、またYouTube側に抗議することを求めています。
ESPNも声明を出し、YouTube(の持株会社であるAlphabet)の時価総額は3兆ドルに達し、その市場支配力をもって強引に価格を引き下げようとしていると非難しています。ディズニーの時価総額は2,000億ドルほどで、確かに15倍の差があると言えるのですが、正直どっちもどっちという感想です。
https://x.com/ESPNPR/status/1984097268585443683
YouTube側も声明を出し、ディズニーが一方的に利益を得る条件を提示していると非難しています。こちらもあわせてお読みください。
昨年8月末、ディズニーとDirecTVの契約が切れた際には、修復まで2週間を要しています。今回は単なる価格交渉の域を超え、コンテンツとプラットフォームのあり方を問う全面的な紛争となっており、さらに長引く可能性が否めません。
従来の紛争はコンテンツ業者とプラットフォーム業者の争いという文脈でしたが、今回は両者ともにコンテンツとプラットフォームを両方保有しているので、さらに紛争のレベルが上がっています。まさに神々の喧嘩といったところですが、そこに幹部引き抜きという人間味が加わっているところがエンタメっぽくもあります。
いちばん迷惑を被るのは当の視聴者ですから、1日も早く解決してほしいと願いますが、解決したところで、視聴者にとっては負担が増す一方であることは変わりません。巨人どうし延々と殴り合ってもらうほうがよいのかもしれません。
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