スポニチ・カキーノ記者、W杯放映権スクープに自信。
昨日、「PIVOT」公式チャンネルのライブ配信に「カキーノ」の愛称で知られるスポニチ・垣内一之記者が出演。先日スポニチがスクープした、2026ワールドカップの放映権がドコモとDAZNの2社になるという記事について解説しています。
カキーノ記者は、Xアカウントで記事にならないような情報を発言することから、移籍情報に詳しい記者として知られるロマーノ氏になぞらえて愛称がつきましたが、その挙動はいわゆる「噂アカウント」にも似ており賛否が分かれる部分も。しかし、今回は先に記事が出ていますので、堂々たるスクープと言ってよいかと思います。
電通&ドコモ・DAZN vs. 博報堂&Amazonの争い
詳しくは動画を見てもらえればと思いますが、大きなポイントとしては以下の2点があげられるかと思います。
- 情報の確度はほぼ100%。FIFAへの返答期限が10/31なので、今後詳細を詰める部分はあるにしろ、2社になることはもう決まっている。
- ドコモ・DAZNは電通と組んだ。対して博報堂はAmazonを担いだが、1社だけでは放映権料をまかなえず脱落した。
プロがつかんだ情報に対して、素人の私がコメントするというのは若干おこがましい気もしますが、最初は博報堂が優先交渉権を得たものの、期限切れとなり電通も交渉に加わったという経緯から、それぞれの陣営がどのサービスを担いだかはおおいに気になるところでした。それが明らかになって、だいぶすっきりした感があります。
二度目の「無料ブースト」は難しいABEMA
ストリーミングの競合としては、まず前回大会の放映権を獲得したABEMAの名前があがりますが、前回はABEMAの認知度を上げるために赤字覚悟で突っ込んだわけで、同じブーストを繰り返す可能性は低かったと言えるでしょう。すでにABEMAは単月黒字化を果たしており、巨額の投資をどんと行うよりも、もっと効率的な投資先を検討するとみられます。
最近はなでしこジャパンの試合を積極的に配信しており、2027年の女子ワールドカップについては有力な候補と考えられます。ABEMAの視聴者層は男性7割・女性3割程度だそうですから、女子スポーツに目を向けるという考え方も一理あるかと思います。
短期イベントには慎重な姿勢だったU-NEXT
次に名前があがるであろうU-NEXTですが、今年3月、日経新聞が掲載した堤社長へのインタビュー記事では、ワールドカップやWBCといった短期間の大型イベントには「慎重に見ている」とのコメントを出していました。
プレミアリーグの放映権獲得とともに開始した「サッカーパック」は初年度から黒字だとしています。サブスクである以上、短期間のイベントで黒字を出すことは難しく、かと言って赤字覚悟で突っ込む意味も薄いです。どこがワールドカップを配信しても、その後プレミアを観たければU-NEXTに来るのですから。
なお、本来であればU-NEXTのプレミア放映権は2025-26シーズンからでした。SPOTV NOWが残り1年の権利を放棄したため、U-NEXTが1年前倒しとなったのです。
先のカキーノ記者の発言によると、U-NEXTが支払う放映権料はSPOTVの倍以上になったとのことですが、初年度はもともとSPOTVの契約を引き継いだだけですから、放映権料がアップするのは今シーズンからだと考えられます。昨シーズンが黒字になったからといって、今シーズンの黒字は保証されていません。ブンデスリーガの権利がとれなかったのも、このことが多少なりとも関係しているかもしれません。
大型イベント好きのAmazon、WBCに続く敗北
同じ日経新聞の記事には、Amazonの石橋事業本部長のインタビューも掲載されていました。石橋氏は対照的に、WBCやワールドカップには「ご縁があれば色々やる」と前向きな発言をしていました。実際、前回のWBCについては権利を持っていたわけですが、ご存じの通り次回はNetflixが獲得したため、Amazonは逃す結果となっています。
WBCもそうですし、ボクシングもそうですが、日本のAmazonは大型イベントが好きです。プライムは動画だけでなくさまざまなサービスの複合体ですから、大型イベントで注目を集めて登録してもらえば、長く定着させる自信があるものと考えられます。通販を筆頭に、放映権料の回収手段をいろいろと持っているわけです。
また、新たな収入源となるのが4月からプライムビデオに導入された広告です。筆者は当時から、広告媒体としての価値をアピールする目的であれば、巨額の投資も可能ではないかという予想をしていました。残念ながら、それを実行したのはAmazonではなくNetflixだったというオチがつくわけですが・・・
放映権料300億円は妥当なのか
上で紹介したFRIDAYデジタルの記事では、ワールドカップの放映権料が400億円超えになると報じていました。正直、当時は眉唾物だと思っていたのですが、スポニチの記事ではFIFAの初期の提示が400億円程度だったとしており、結構当たっている内容でした。
結局、博報堂とAmazonはこれを回収するスキームを描くことができず、電通とドコモ・DAZNが300億円程度で落札したというのが筋書きです。2社であればなんとか負担できそうですし、DAZNはともかくドコモは赤字覚悟で投資できる企業であることは確かです。
前回の放映権料は諸説ありますが、最新の情報では「二百数十億円」です。当時のレートは1ドル=110円程度なので、約2億ドルと考えると、現在のレートでは確かに300億円程度となります。FIFAの視点だと、試合数が増えたにも関わらず、ドルベースでは値上げを勝ち取ることができなかったと考えることもできます。
ただ、それはあくまでも前回大会と比較した相対的なものであり、絶対的な金額としては300億円はやはり高いと言わざるを得ません。日本時間では午前中の開催となるため、とくに平日は生中継の視聴者数がさほど期待できません。ライブ配信だけでなく、見逃し配信を含めた稼ぎ方を考えていく必要があります。料金設定やサブライセンスに加え、上述した広告ビジネスが大きなカギとなるでしょう。
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